写経をはじめるにあたって

写経をはじめる環境としては、最低限の清潔さは保っていただくことが大切です。
写経を通して仏さまと向き合うわけですから、是非実践していただきたいものです。

具体的には、手洗い、うがい、汗をかいていればシャワーを浴びるなどして身を清めてください。
周りの環境を整えることも大事です。
写経をする机の上の整理、身の回りの整頓などなど。

これらの行為は、自分にとっても清々しい気持ちではじめられます。

その他、部屋を清める為に、お香をたいたり、数珠を用意して、「はじめさせていただきます。」と頭をさげてからはじめる人もいます。

これらは決して押し付けではありませんので、ご自分に合うやり方ではじめてください。
ただ、自分が集中できる環境を保つということは必要になってくると思います。

静かな部屋で取り組む。
正座が苦手な人は休憩しながらでも結構ですし、正座自体が無理なら正座用椅子などの便利グッズを用意しても構いません。
正座椅子
生理現象に関しては、事前に済ませておくのはもちろんですが、そうはいかない場合もあります。
途中にお手洗いに行きたくなった場合は、「失礼します。」と数珠で手を合わせ、行かせていただきましょう。
いずれにしましても写経をはじめるには、「させていただく」という謙虚な姿勢をもつことが必要です。
 
実際に書いてみる


まずは模写からはじめられるのがいいと思います。
手本を下に敷き、用紙を置いてなぞります。
写経用紙    写経手本
心経のお手本を見ると、1行は17字で構成されています。
これは古来からの約束事で、般若理趣経では、「17は清浄の本有を示す」とあり、そこからはじまったという説があります。

臨書は、心経の手本を左側におき、手本の字を見ながら書く方法です。
界線を自分で引くのですが、はじめは界線入りの用紙を使うのが便利です。
慣れてきたら、灰色か銀色で界線を引いてください。
写し終えたら、年月日と謹書と書き、署名します。

 

○内題


本文の巻頭にある経名です。
「摩訶般若波羅密多心経」など
字間を本文より詰めて書き、字の大きさは本文と同じにするのが決まり事です。

 

○本文

本文の1行は17字です。
界線からははみ出さないようにしましょう。

写経の作法には「1字3礼」というものがあります。
心をこめて写経を1字書くことに3回礼拝するというものです。
さすがにそこまでして写経をするのは時間的にも大変ですので、する方はあまりおられませんが、「1字3礼」の精神で書くことを心がけて書くことをオススメします。

 
○奥題

本文の終わりに「般若心経」と書くのが奥題です。
本文の終わりから1行空けるかどうかは決まりはありません。

願文を書く場合は、奥題のあとに1行の空白が必要で、さらに年月日・記名があり、そのあとにもう1行が必要です。
ですから、それらのバランスを考えて奥題を書いてください。

本文を書き終わったら、必ず確認しましょう。
誤字や抜けた字がある場合は、その箇所に点を打ち、その行の上に正しい字を書きます。

 
○願文


奥題のあとに書きますが、書式に決め事はありません。
複数行になってもよく、和文でも問題ありません。

願文例

奉祈願○○家家内安全也

奉祈願○○健康回復也

などなど

写経には雅号は用いないでください。
また、雅印も押さないでください。

写経用の筆と硯

 

写経中に間違えたら


写経の途中では誤字脱字が生じることもあります。
なかなか思うように筆が進まないこともありますが、それでよいのです。
大事なことは途中で挫折しないことです。

写経が終わったあとの写経用紙の保管

粗末に扱わないのが大前提です。
床の間や仏壇付近にに入れて保管するなどしておくとよいです。
ある程度溜まった場合は、お寺でのお焚き上げの際に納められてはいかがでしょうか?
その際、納めていただく供養料が必要です。