写経をはじめるのに適した般若心経

写経をはじめるにあたって、般若心経は最も適していると言われます。

その理由は、まず文字数がほかのものに比べて少ないことがあります。
次に内容が大般若経の要約として1巻にまとまっているためです。

ちなみに宗教上の理由で般若心経を書けないという方もおられると思いますが、その場合は、延命十句観音経など、それぞれの宗派のさわりや短く抜粋して書いても問題ありません。

般若心経の構成

さて、それでは般若心経の構成についてです。

般若心経には、状況説明や「空」にまつわる理論が展開される前半と、「呪」にまつわる効能などが書かれている後半によって構成されています。

前半は、「観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時」というように、般若心経の内容が説かれている説明から始まります。

次に、「色即是空」をはじめ、「空」を見極めるための理論が散りばめられています。

そのあと、「三世諸仏」が「得阿耨多羅三藐三菩提」と「空」を見極めることで悟りをえられるという結果が語られています。

後半部は、

「故知般若波羅蜜多」以降の部分で、「是無上呪」などのように、「般若心経」に書かれている呪がいかに素晴らしいかを説明することに大半が費やされています。

実際の呪である「羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦」で締めくくられています。

般若心経の目的は、悟りを求める人々に「空」を見極めることの大切さを説き、「呪」を唱えさせることにあります。

 

般若心経の教え

「有る」と「無い」

般若心経とは、いったいどんなことを我々に伝えようとしているのでしょう?
般若心経に書かれているのは、終始一貫して、人が「有る」と考えていることに対して、「無い」と繰り返し説いています。
はじめは違和感を感じて、否定したくなりますが、繰り返し写経しているとその意味がしっくりくるのが不思議です。

人間は、この「有る」に執着して一生苦しみます。
「有る」というのはどういうことか、そしてなぜ「無い」ということを般若心経は何度も説くのか。

人間は生まれて命をもちます。
この命を永久に得られるのであればよいのですが、それは叶いません。
いつまでも生きていける気がしていても、いつかその命は果ててしまいます。どんな人であろうと関係なく、全ての人に終わりがあります。


般若心経 その内容について



般若心経では、2行目に「五蘊皆空ごうんかいくう」とでてきます。

人間を形成しているものは、肉体と心ですが、それを色・受・想・行・識の五蘊といい、五(パンチャ)蘊(スカンダ)集まりの意味で、人間は肉体と心の集合体であるに過ぎず、その集合が分解したら、たちまち空に帰すというのです。

つまり人間は、肉体と心とをあわせもった存在であるということ。
仏様の知恵をもって、波羅蜜多行(はらみたぎょう)を深く考え、そしてそれを行うことが大事だと言っています。